AD/HDの対処法
- こども発達支援教室アクア
- 2023年2月4日
- 読了時間: 4分
伊勢原市で発達障害のあるお子様に個別療育を提供している児童発達支援・放課後等デイサービス、こども発達支援教室アクアです。今回はAD/HDについてのお話です。
結論から言うと、いわゆる療育での改善が難しいのが不注意や多動の問題(AD/HD)です。もし、服薬せずともナントカ療法や運動・整体・サプリメント等によってAD/HDは治るという療育関係者がいたら、ちょっと眉唾ものと疑った方が良いと個人的には考えています。
3歳前後で落ち着きの無い子の場合は、5歳くらいまでに自然と落ち着いて座っていられるようになるケースと、落ち着かないままのケースに分かれます。それまではAD/HDなのかどうかを客観的に判断する方法は現在のところありません。もしもAD/HDだった場合、そのままでの療育訓練の実施は難しいものになります(理由は後ほど述べます)。
私たちは、仮にAD/HDの診断が出ていなくても、5歳を過ぎて多動や不注意の問題が大きいと感じたお子さんには受診と服薬を勧めているのですが、特に服薬については複雑な思いを抱かれる保護者様は多いですし、そうした葛藤は十分に理解できるものです。保護者様の中には子どもが少しでも楽になるならと服薬を試してみても良いのではないかと思っていたのに、学校の先生や家族に副作用が心配だからと反対されたというケースもありました。
東洋経済オンラインでも服薬について否定的な保護者の意見が大きく取り上げられています。
それでも受診と服薬を勧めているのは、子どもの社会生活という文脈から見た場合に、多動や不注意の問題は子ども自身から様々な学びの機会を奪い続けるという、発達や学習にとってあまりに強烈な影響力を持っているからです。
学校の勉強や日常生活、対人関係について、私たちは日々の経験を通して様々なことを学んでいます。何かで失敗すると同じ思いは二度としたくないので、次からは判断や行動を変えようとします。
しかし、AD/HDの子たちにはこれが非常に困難です。注意があちこちに飛んでしまうので、自分がどうして出来なかったのか、あの時に失敗したのは何故なのかを振り返ることが難しく、同じ失敗を繰り返してしまうのです(それでいて失敗したというネガティブな感情だけは残ります)。学校の授業も聞いていないことが多いので、当然のことながら勉強が遅れるケースも少なくありません。
また、こうしたお子様たちは発達検査や知能検査でも本来の知能より低い値が出てくる場合が多いです。何故なら、検査の最中も不注意で質問を聞いていなかったり、検査用具を見ていないからです。
最も重要なことは、AD/HDの問題を抱えた発達障害の子どもたちが学習できずに足踏みしている間に、同学年の子たちは同じ環境内の経験から多くのことを学び取って成長し、学習面だけでなくコミュケーションや社会性も複雑化させていくことです。 相対的に、AD/HDの問題を抱えた子たちは集団の中で取り残されてしまいます。そして、自信の喪失から不登校になったり、学習への意欲を失ったり、将来的には鬱病になるなどの精神的な不安定さに繋がる場合もあります。
10歳前後になると身体的な成長に伴って、目立ったAD/HD的な特徴が見られなくなるケースもありますが、不注意傾向は残っていることが大半ですし、それまでに苦手なことを回避する傾向が身についてしまっていたり、上記のような容易に埋められない差がついてしまっていることが問題なのです。
服薬については、そのリスクとメリットを比較して決めるというのはよく言われることですが、社会の中で育っている真っ最中の子どもたちについては、「服薬しないことによる学ぶ機会の喪失」という視点についても十分に意識した上で、よくよく検討して頂ければと思います。
前述の東洋経済オンラインの記事では知的障害もあるお子様が服薬しながら就労支援事業所に通っているが、薬を飲み忘れると不安になってパニックになるので飲ませなければ良かったというお母様の意見が書かれていました。しかし、お子様自身はどう思っているのでしょう? おそらく服薬しない状態は仕事に集中することが難しく、失敗してしまうことが多いと自覚しているからこそ、薬の飲み忘れが不安になるのではないでしょうか。
お子様によっては、大人になって自己判断が出来るようになったら、本人が服薬を中止することを選択する場合は当然あり得るでしょう。
ですから、お子様が自分の人生にとって何が大切か、自己決定が出来るように育てることがとても重要になります。親はずっと子を守り続けることは出来ないのですから…。
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